コラム | システム部門の担当者必見!
レガシーシステムからの脱却と問題点を解説、2025年の崖を乗り越えるクラウド移行方法
システム部門の皆さん、レガシーシステムの問題点に直面していませんか?
システム部門の方からよく聞くのが、「突然、社内システムの保守や運用に関する業務を引き継ぐことになり、戸惑っている」「システム改修をしたいが当時の担当者が退職してしまい、どこから変更すれば良いか分からない」「システムの仕様書が残っておらず、レジェンド担当者が退職することになったものの引き継ぐことができない」というようなお声です。多くの企業が今、長年にわたり利用し続けてきた古いシステム、いわゆる「レガシーシステム」の課題に直面しています。レガシーシステムは、既存のビジネスプロセスを支える重要な役割を果たしていますが、その一方でさまざまな問題をはらんでいるのです。
「レガシーシステム」は、もはや経営者や部門責任者の方にとっても避けては通れない課題となっています。このコラムでは、レガシーシステムの問題点を理解し、適切な対応を取るために必要な情報をお伝えいたします!
レガシーシステムとは?
レガシーシステムの定義
レガシーシステムとは、旧式でありながら依然として使用され続けているシステムのことです。具体的には、以下のような特徴があります。
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- 特徴1:
古い技術で構築されている - 現在では一般的でない(当時は一般的だった)技術やプログラム言語で作られていることが多い。
- 特徴1:
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- 特徴2:
長期間使用されている - 導入から10年以上経過しているシステムが典型的。特に1980年代に多くの企業がオフィスコンピューターやメインフレームを導入したため、そのまま使用され続けているケースもある。
- 特徴2:
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- 特徴3:
重要な業務を支えている - システム刷新をしたいと思っても、企業の中で重要な役割を果たしているため、簡単に廃止・乗り換えができない。
- 特徴3:
レガシーシステムの概要
レガシーシステムの多くは、当初の開発目的を達成しているものの、現在のビジネスニーズや技術の進化に対応できなくなっています。
- <例>
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- メインフレームシステム:
- 多くの企業で使用されている大型計算機システムで、銀行や保険会社などの基幹業務を支えています。
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- ERPシステム:
- 企業の資源計画を管理するシステムで、多くの企業が利用していますが、古いバージョンのままでは最新の機能やセキュリティ対策が不足しています。
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- 独自開発システム:
- 特定の業務に合わせて開発されたシステムで、技術的な変化に対応しにくいです。
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特に以下のような業種や部門で見られることが多いです。
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- ① 金融機関:
銀行や保険会社のコアシステム -
- 特徴 :
- 1970年代や1980年代に開発されたメインフレームコンピュータ上で動作していることが多い
- 問題点:
- 信頼性と正確性が最優先となるため、システム更新や変更には最大限の慎重さが必要
また金融商品によっては長期契約や何十年経ってから満期を迎えるものがあるため、既存顧客のための既存システムと最新のシステムとのやり繰りが大変困難 - 影響 :
- システムの障害が発生すると、顧客の取引が停止し、信頼性に大きな影響を与える可能性がある
- ① 金融機関:
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- ② 製造業:
生産管理や在庫管理システム -
- 特徴 :
- 1980年代や1990年代に導入されたカスタムメイドのシステムが多い
- 問題点:
- 古いハードウェアとソフトウェアが密接に結びついており、新しい技術との互換性が低い
- 影響 :
- 生産ラインの効率が低下し、製品の品質管理にも悪影響を与えることがある
- ② 製造業:
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- ③ 公共機関:
市役所や病院の管理システム -
- 特徴 :
- 市役所や病院で使用されているシステムは、古いデータベース技術と連携している
- 問題点:
- データの更新や検索に時間がかかり、業務効率が低下
- 影響 :
- 住民サービスや患者ケアに遅れが生じることがある
- ③ 公共機関:
レガシーシステムの主な問題点
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- 保守コストの増加
- レガシーシステムの保守や運用にかかるコストは年々増加しています。
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- セキュリティリスク
- 古い技術を使用しているため、最新のセキュリティ対策が十分に施されていないケースが多いです。
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- ブラックボックス化
- 長期間にわたる運用で、システムがブラックボックス化し、理解が難しくなっています。
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- 人材不足
- レガシーシステムを理解し、保守できる人材が減少しています。
これらの問題点に対処するためには、レガシーシステムからの脱却が必要です。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるためには、システムの刷新やクラウド移行が欠かせません。
しかし、レガシーシステムへの課題感は各企業が持っているもの、以下のような理由で依然として多くの企業で使用されているというのも事実です。
- ➀ 新しいシステムを導入するためのコストが高く、経済的に厳しい
- ② レガシーシステムの多くの場合は重要な業務を支えているため、システム移行による一時的な業務中断が大きなリスク
- ③ 新しいシステムとの互換性が低いため、技術的な移行が困難。
問題点や課題もある中、現在は「2025年の崖」と呼ばれる問題が迫っているため、早めの対応が求められます。
2025年の崖の概要と背景
2025年の崖とは?
「2025年の崖」とは、経済産業省(以下、経産省)が提唱した概念で、2025年までにレガシーシステムから脱却しなければ企業が直面し得るリスクや問題を指します。2018年9月に発表した「DXレポート」では、多くの企業が依存している古いシステムが、ビジネスの成長やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展を阻む可能性が高いことを示しています。本レポートでは、2025年までにシステム刷新を集中的に推進する必要があると言われています。
(経済産業省のサイトに移動します)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_02.pdf
具体的には以下の状況のことを指します。
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- 技術者不足
- 多くの企業で使用されているレガシーシステムを維持・管理できる技術者の高齢化に伴い、2025年までに大量に退職することが予測されています。2015年には約17万人のIT人材不足だったのが、2025年には約43万人まで拡大すると言われています。
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- システムの老朽化
- 2025年までに、現在稼働中の多くのレガシーシステムが耐用年数を迎え、システムの維持が困難になります。
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- サポート終了
- 主要なシステムやソフトウェアのベンダーが2025年を境にサポートを終了する予定の製品が多く、これが企業にとって大きなリスクとなります。
2025年の崖が重要な理由
「2025年の崖」が重要視される理由は多岐にわたります。以下の点を考慮すると、その影響の大きさがわかります。
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- ➀ 業務継続性のリスク
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- レガシーシステムが停止すると、業務が一時的に停止する可能性が高くなります。
- 重要な業務を支えるシステムが古いため、突然の故障が企業全体の運営に影響を与えるリスクがあります。
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- ② コストの増加
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- レガシーシステムの維持・管理にかかるコストが年々増加しています。(経産省のDXレポートでは、システムの維持管理費が高額化し、IT予算の9割以上を占めると言われています)
- 古いシステムの修理や更新には多大な費用がかかり、新しい技術への投資が難しくなります。
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- ③ セキュリティリスクの増大
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- レガシーシステムは最新のセキュリティ対策が施されていないことが多く、サイバー攻撃のリスクが高まります。
- セキュリティホールが残ったままのシステムは、情報漏洩や不正アクセスの温床になります。
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- ④ 技術者不足
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- 古いシステムを理解し、維持・管理できる技術者が減少しています。
- 特に、COBOLなどの旧式プログラミング言語を扱える技術者が少なくなってきています。
2025年の崖に向けた対策
2025年の崖を乗り越えるためにも、レガシーシステムからの脱却は不可避と言えるでしょう。
レガシーシステムからの脱却法
モダナイゼーション
モダナイゼーションとは、レガシーシステムを現代の技術に対応させるプロセスです。具体的には、システムのリファクタリング(再設計)や新しいプラットフォームへの移行などが含まれます。モダナイゼーションの利点は、システムの効率化、保守コストの削減、セキュリティの強化などです。
- <メリット>
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- 業務効率の向上:
- 最新の技術を導入することで、業務プロセスの自動化や効率化が進みます。
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- コスト削減:
- 古いシステムの維持・管理コストが高いため、モダナイゼーションにより長期的なコスト削減が期待できます。
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- セキュリティの強化:
- 最新のセキュリティ対策が施されており、情報漏洩や不正アクセスのリスクが減少します。
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- <モダナイゼーションの方法>
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- ➀ 再構築(リビルド)
- 古いシステムを一から再構築します。最も時間とコストがかかる方法ですが、最適なシステムを構築できます。
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- ② 再設計(リファクタリング)
- 既存のシステムの設計を見直し、改善を行います。コードの再利用が可能で、比較的低コストで行えます。
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- ③ ラップアラウンド
- 古いシステムに新しいインターフェースを追加し、部分的にアップデートします。システム全体を一度に更新するリスクを回避できます。
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マイグレーション
マイグレーションとは、既存のシステムやデータを新しい環境に移行することです。例えば、オンプレミス(自社設置)のシステムをクラウドに移行することが典型的な例です。マイグレーションには、データの移行、アプリケーションの再配置、そして新しいインフラストラクチャの設定が含まれます。
- <メリット>
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- システムの安定性向上:
- 新しい環境に移行することで、システムの安定性が向上します。
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- パフォーマンスの改善:
- 最新のハードウェアやソフトウェアを利用することで、システムのパフォーマンスが向上します。
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- コスト効率の向上:
- 新しい環境では、運用コストやメンテナンスコストが低減します。
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- <マイグレーションの方法>
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- ➀ リホスト(リフト&シフト)
- 現在のシステムをそのまま新しい環境に移行します。最も簡単な方法ですが、根本的な改善は期待できません。
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- ② リプラットフォーム
- システムの一部を新しいプラットフォームに適応させます。コストと労力を抑えつつ、一定の改善が期待できます。
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- ③ リプレース
- 古いシステムを完全に新しいシステムに置き換えます。大規模なプロジェクトとなりますが、最も効果的な改善が期待できます。
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クラウド活用
クラウド活用の利点は、スケーラビリティ(拡張性)、柔軟性、そしてコスト効率です。クラウドサービスは、企業が必要なリソースを必要な時に利用できるようにし、ITインフラの管理を簡素化します。以下に、クラウド移行の主要な利点を挙げます。
- <クラウド活用のメリット>
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- 柔軟なリソース管理:
- 必要なときに必要なリソースを利用できるため、効率的なリソース管理が可能です。
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- コスト削減:
- ハードウェアやソフトウェアの購入・維持費用が削減され、運用コストが低減します。
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- セキュリティ強化:
- クラウドプロバイダーは最新のセキュリティ対策を提供しており、セキュリティリスクが軽減されます。
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- <クラウド移行の方法>
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- ➀ クラウドプロバイダーの選定とパイロットプロジェクトの実施
- まず、現在のシステムの状況を詳細に分析し、どの部分がクラウドに適しているかを評価します。システム構成、データ量、アプリケーションの依存関係を把握し、移行の目的と達成すべき目標を明確にします。次に、移行の優先順位を決め、どのシステムから移行するかを決定します。
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- ② 戦略策定
- 適切なクラウドプロバイダー(AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなど)を選び、コスト、機能、セキュリティ、サポート体制を比較検討します。その後、小規模なシステムやアプリケーションで試験的にクラウド移行を行い、問題点や改善点を洗い出し、本格移行に向けた準備を整えます。
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- ③ 本格移行と運用管理
- 移行スケジュールを詳細に計画し、データとアプリケーションをクラウド環境に移行します。データの整合性と完全性を確認し、アプリケーションの動作確認を行います。システム全体の動作確認後、本番環境での運用を開始し、クラウド環境の運用・管理を行います。定期的なモニタリングとメンテナンスを行い、システムの最適化を図ります。
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モダナイゼーション、マイグレーション、クラウド活用、いずれの方法でも現行システムの把握が必要となります。しかし、最初のステップである膨大なプログラムの解析をおこなうための技術者を確保するのが難しいというのが現状です。
現行システム把握・解析に有効な「リバースエンジニアリング」
現行システムの把握・解析におけるコストや人材不足の課題を解決するための方法の1つが「リバースエンジニアリング」です。リバースエンジニアリングを最初に行うことで下記のメリットがあります。
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- 1. システム理解とドキュメント生成
- 古いシステムには、詳細なドキュメントがない場合があります。リバースエンジニアリングを行うことで、システムの構造や動作を理解し、現在の状態を正確に把握するためのドキュメントを生成できます。
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- 2. ブラックボックスの解消
- 長期間運用されているシステムは、ブラックボックス化していることが多いです。リバースエンジニアリングにより、コードの内部構造やデータフローを明確にし、システムの全体像を把握することができます。
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- 3. 移行計画の策定
- 現行システムの詳細な把握は、クラウドへの移行計画を立てる際に不可欠です。リバースエンジニアリングを通じて、システムの依存関係や互換性の問題を洗い出し、適切な移行戦略を策定するための基礎情報を提供します。
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- 4. コスト削減
- リバースエンジニアリングにより、システムの無駄な部分や非効率なプロセスを特定し、最適化することが可能です。これにより、不要なリソースを削減し、コスト削減を実現できます。
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- 5. セキュリティ向上
- システムの全体像を把握することで、潜在的なセキュリティリスクを発見し、対策を講じることができます。リバースエンジニアリングは、既存のセキュリティホールを特定し、修正するための有効な手段です。
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- 6. システムの継続的改善
- 現行システムの詳細な理解は、システムの継続的な改善と保守に役立ちます。リバースエンジニアリングを通じて得られた知識は、今後のシステム改修やアップデートを効率的に行うための基盤となります。
リバースエンジニアリングは、システムの全体像を把握し、効率的な移行と最適化を実現するための強力なツールです。このプロセスを活用することで、現行システムの問題を解決し、より効果的なITインフラを構築することができます。
レガシーシステムの解析に生成AI×技術者ノウハウ
「生成AI活用サービス AI-no-te™(アイノテ)」
「生成AI活用サービス AI-no-te™(アイノテ)」
システム移行にリバースエンジニアリングを検討の企業様へ、現行システムの把握に"生成AIを活用したリバースエンジニアリング"があるのをご存知ですか?
東芝デジタルエンジニアリングでは、ITインフラの最適化と効率化を支援するために、「AIリバースエンジニアリングサービス」を提供しています。当社のこのサービスは、生成AIによるリバースエンジニアリングを行った後に、当社技術者が検証をおこなうことにより精度の高いアウトプットを提供します。
AIリバースエンジニアリングサービスの特徴
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- 高度な解析能力:
- AIを活用してレガシーシステムの詳細な解析を行い、最適な移行計画を立案します。
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- コスト効率の向上:
- 従来の手法と比較して短期間で移行が可能で、コストを大幅に削減します。
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- セキュリティの強化:
- 最新のセキュリティ対策により、データの安全性を確保します。
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