東芝デジタルエンジニアリング株式会社

ITエンジニアが語る、デジタルマーケティングを実現するプラットフォーム「Adobe Experience Manager」

1. Adobe Experience Managerとは

皆さんはAdobe Experience Managerをご存じでしょうか?
Adobe Experience Managerは知らなくても、「デジタルマーケティング」と言う言葉は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

「デジタルマーケティング」は、インターネットを介して、パソコンやスマートフォン、様々なデジタル機器で自社ブランドや商品を効率よく知って貰い、顧客の動向を探った上で顧客に最適な情報を提供する一連のマーケティング活動を指します。

アドビでは、デジタルマーケティングを実現し、優れた顧客体験によりビジネスを成功に導く包括的なクラウド基盤として、「Adobe Experience Cloud」という製品群を展開しています。
アドビは米Gartner(ガートナー)社から発行されるマジック・クアドラントで「リーダー」に分類されており、デジタルでの大規模なブランディングや広告、グローバルなマーケティング展開が必要なエンタープライズ向けの製品に位置付けられています。

Adobe Experience Cloudにおける、Adobe Experience Managerのポジション Adobe Experience Cloudにおける、Adobe Experience Managerのポジション
Adobe Experience Cloudにおける、Adobe Experience Managerのポジション(青枠)

「Adobe Experience Cloud」は以下の製品をはじめとした複数の製品で構成されており、相互に連携することができます。

  • Adobe Analytics
    Webサイトなどのデジタルチャネルでの顧客データを統合・収集・分析を行なうことができます。
    さらに、AI(Adobe Sensei)との連携し、将来の顧客の行動を予測することもできます。
  • Adobe Target
    Webサイトなどのデジタルチャネルで、A/Bテストや多変量テストといった、オンラインテストを実施します。Adobe Experience Managerと連携することで、Webサイト内のコンテンツのパーソナライズ化が可能となります。
  • Adobe Commerce
    単一の基盤で、B2B、B2C、B2Eに対応できる、デジタルコマース基盤です。
  • Adobe Experience Manager
    様々なデバイス、チャネルを横断して一貫した顧客体験を提供するCMS(Contents Management System:コンテンツ管理システム)です。

なかでも最後に挙げたAdobe Experience Managerはデジタルマーケティングの実現においてコアとなる製品で、Webコンテンツを管理する「Sites」と、画像や動画などのデジタルアセットを管理する「Assets」から構成されています。

このコラムでは、数多くのお客様へのAdobe Experience Manager導入を経験し、活用いただいているITエンジニアの立場で、この製品の優れているところや活用いただいているお客様のことを可能な限り本音トークで書いていきたいと思います。

2. Adobe Experience Managerが優れている点、選ばれる理由

アドビでは、Adobe Experience Managerを"コンテンツ管理とデジタルアセット管理の最強の組み合わせ"と紹介しています。コンテンツ管理に相当するのが、Adobe Experience Manager Sites、デジタルアセット管理に相当するのが、Adobe Experience Manager Assetsです。

Sitesでは、テンプレートやコンポーネントといった部品をもとに、ページを作成することができます。これらの部品はカスタマイズ可能なため、これらを開発するメンバーと、部品を組み合わせてページを作成するメンバーとで役割分担ができ、ページ作成を効率的に実施し、迅速にPCやモバイル端末などにサイトを公開することが可能です。

一方、デジタルアセットは、ファイルサーバなどで格納はするものの、必要な時に見つけることができず、結果として同じデジタルアセットが、複数のファイルサーバに散在してしまい、どれが最新なのかわからなくなるといった話をよく聞きます。

Adobe Experience Managerでデジタルアセット管理を担う、Assetsでは、単にデジタルアセットを格納するだけではなく、必要な時に見つけやすくするために、AIでのタグ付けなどにも対応しています。
また、デジタルアセットの保管に限らず、Adobe Creative Cloudとの連携で、編集や共有も可能になっています。デジタルアセットの作成においては、PhotoshopやIllustratorなどを利用されているお客様も多いと思いますが、同じアドビ製品であることによる連携の親和性は大きなメリットになると感じています。

Assetsと Adobe Creative Cloudの連携

3. Adobe Experience Managerを活用しているお客様の声

それでは、実際にAdobe Experience Managerを導入してデジタルマーケティングに活用しているお客様の声をお伝えします。

事例1: 建設業
デジタルアセットの一元化を推進

お客様の取り扱い製品の画像や動画といったデジタルアセットが、複数の社内システムで個別に管理されていましたが、Adobe Experience Managerを導入してデジタルアセットの一元化を進めています。すでに、社内での製品カタログの作成や、Webサイトで販売代理店に向けて画像を提供するなど、ご活用いただいております。

デジタルアセットの一元化を推進

事例2: 食品業
パーソナライゼーションに向けての第1歩

これまでデジタルアセットを格納していたファイルサーバの契約期間切れにともない、Adobe Experience Managerへ切り替えたケースになります。まずはAssetsを導入することから始め、将来的には、WebサイトをSitesへ移行、さらには、Adobe TargetなどAdobe Experience Cloudを導入し、Webサイトのパーソナライズ化を目指しています。

パーソナライゼーションに向けての第1歩

事例3: 製造業
デジタルアセットを取引先と共有

お客様の取引先の製品に関する広告を作成しており、製品の画像や制作した広告を取引先と共有するための基盤として、Adobe Experience Managerを導入したケースです。将来的には、Adobe Experience Manager上のアセットをWebサイトに利用した、Webサイトの構築も視野に入れています。

デジタルアセットを取引先と共有

事例4: 製造業
グループ会社のWebサイトの統一化

お客様および傘下のグループ会社で作成している各社のWebサイトにて、デザインを統一するためにAdobe Experience Managerを導入したケースです。段階的にリリースし、全グループ会社への展開を進めています。

グループ会社のWebサイトの統一化

4. Adobe Experience Managerを導入する時のポイント

このように、Adobe Experience Managerを用いてデジタルマーケティングに成功しているお客様が多くいらっしゃる一方、せっかく導入したのにあまり活用できていない、効果を享受できていないお客様がいらっしゃるのも事実です。
上手に導入・活用しているお客様と上手く導入・活用ができていないお客様で何が違うのかを私なりに考えてみました。

まず、上手に導入・活用されているお客様を分析すると、以下の共通点があると感じています。

  • スモールスタート
    例えば最初は SitesまたはAssetsだけ導入するとか、ある部門に限定して導入する。といったように、まずは小さくはじめ、徐々に範囲を広げる。といった進め方をされるお客様が多いようです。
    小さく始めることで、徐々に Adobe Experience Managerを使った運用のノウハウがたまり、展開しやすくなると考えられます。
  • 将来像
    この製品の導入に限った話ではないかもしれませんが、将来こうありたい。こういうことをしたい。というイメージを持つことが大事かと思います。
  • 使ってみる
    導入するにあたって、なるべく早い段階から Adobe Experience Managerにふれて、いろいろ試してみる。ということをされるお客様も多く見受けられました。
    この製品のヘルプは、Webに公開されていますが、ヘルプを見るだけではなく、実際に触ってみることで、できること/できないこと、や業務にどう組み込めるかが、イメージしやすくなるという声もありました。

反して、上手に導入・活用ができていないお客様では、どんな機能を使えばビジネスに役立つのかといった将来像を描けないまま運用を開始していることが多いようです。Adobe Experience Manager、と一括りにいっても多くの機能があるので、それらをどうやってビジネスに活かすかを考えておかないと、効果測定や改善策の立案に苦労するのではないかと感じています。

5. Adobe Experience Managerをさらに活用するためには

このように、上手に導入して活用すれば、課題を解決して企業価値の向上につながるAdobe Experience Managerですが、ここからは導入されているお客様に向けて、さらに使い倒すことができるポイントや機能や仕組みを紹介したいと思います。

  • SitesとAssetsの連携
    Sitesを導入してWebサイトを構築した。Assetsを導入してデジタルアセットを管理した。というところまでは、実現できているお客様も多いとは思いますが、自社のデジタルアセットを活用して、Webサイトに活かすなど、SitesとAssetsを連携することで、Adobe Experience Managerをより有効に活用することができます。
  • Adobe Experience Cloud製品との連携
    冒頭で記しましたように、Adobe Experience Cloudには、様々な製品から構成されています。
    分析やパーソナライゼーション、ECの導入なども検討されている場合は、これらの製品との連携も視野に入れてはいかがでしょうか。
  • Adobe Creative Cloudとの連携
    Adobe Creative Cloudとは、PhotoshopやIllustrator、XDなどデジタルアセットの作成を支援する製品群です。たとえば、Photoshopで作成した画像を、Photoshopから Adobe Experience Managerにアップロードし格納することもできます。また、PhotoshopのAPIを使用して、Adobe Experience Managerで画像を加工することもできます。
  • 開発への道
    Adobe Experience ManagerでWebサイトを構築するにあたり、元々提供されている標準部品だけでは、やりたいことが実現できず、開発するケースが多く見受けられます。Adobe Experience Managerでは、開発者向けのチュートリアルをWebで公開していますので、開発に興味のある方は、試してみてはいかがでしょうか。

6. さいごに

Adobe Experience Managerの導入から活用、運用までを手掛けるITエンジニアの視点でAdobe Experience Managerについて書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。

Adobe Experience Managerは多くの機能を持つ製品ですので、ここでお伝えできたのは、ほんの一部分にすぎません。デジタルマーケティングの世界へ一歩踏み出すために、コンテンツ管理とデジタルアセット管理の最強の組み合わせと謳われている Adobe Experience Managerに、ご興味を持っていただければ幸いです。