事例紹介
健保基幹業務システムHiPROS 導入事例「大阪自動車販売店健康保険組合様」
保険給付業務の効率化と健康増進活動の向上
大阪自動車販売店健康保険組合は財政状況が厳しいなか、医療費適正化を目指し被保険者や被扶養者への健康保持、増進のため保健事業を展開している。データヘルス計画の施行に伴い、この保健事業をさらに充実させたいと考えていた。
このため、業務を効率化し、効果的な保健事業の展開を目的として、「HiPROS」と「総合健康マネジメントシステム」が導入された。
課題
大阪自動車販売店健康保険組合では、被保険者・被扶養者が重篤な病気にかかることで発生する多大な医療費が、財政を圧迫している。
解決
「HiPROS」により、レセプト業務時間が半減した。削減できた時間は「総合健康マネジメントシステム」による医療・疾病・健診の情報分析に振り分け、健康増進活動・保健事業を展開。これにより、重篤な病気に罹患する被保険者・被扶養者が減少し、長期的な財政の改善に寄与している。
「HiPROS」 (ヒプロス) について:
「HiPROS」は、 公益財団法人日本生産性本部 (Japan Productivity Center, JPC) 様が開発した健康保険組合業務の統合型基幹システム。
パッケージシステムでありながら、健康保険組合のニーズに対応して柔軟にカスタマイズできる点が特長。
「総合健康マネジメントシステム」について:
「総合健康マネジメントシステム」は、一般財団法人関西情報センター (Kansai Institute of Information Systems, KIIS) 様が開発した効果的な保健事業計画の策定・検証支援システム。
健康保険組合が保有する健康・医療データの管理・分析を支援する。
東芝情報システムは、 JPC 様・ KIIS 様から委託を受け、「HiPROS」および「総合健康マネジメントシステム」の開発と、お客様への導入・保守・サポート作業を行っている。
導入の背景
全国の健康保険組合では、後期高齢者支援金と前期高齢者納付金の拠出が、保険料収入の4割を超える重い負担となっている。特に、約7割の健康保険組合の経常収支は赤字に陥っている。大阪自動車販売店健康保険組合においても、3年連続の赤字が続いている状況だった。
同健康保険組合の課題は、被保険者・被扶養者が重篤な病気にかかることで発生する多大な医療費が、財政を圧迫していることだった。同健康保険組合は財政を改善するため、医療費削減を目標とした。そのため、特定健診の結果に基づき、被保険者・被扶養者に対する保健指導により重篤な疾病 (例: 成人病など) の予防を進めることで、医療費削減を実現しようと考えた。
予防のためには、レセプト分析により医療費負担が重い疾病を発見するとともに、該当疾病に罹患する患者の早期発見が必要であり、これが医療費削減につながると考えた。
導入の経緯
平成30年度より後期高齢者支援金の加算・減算制度について、保険者インセンティブが強化される。保険者は特定健診・保健指導の実績だけではなく、保険者共通の指標などで総合的に評価されることになる。
後期高齢者支援金が加算されれば、健康保険組合の財政は逼迫し、保険料率を上げざるを得なくなる。その結果、事業所や被保険者への健康保険料の負担が増すことになる。健康保険組合では、平成30年度に向けて、健康増進活動の強化を図り、支出の削減に努めることが急務となっている。
大阪自動車販売店健康保険組合・植田常務理事は、「従前の基幹業務システムを『HiPROS』にリプレースすることで効率化を図り、削減できた時間で『総合健康マネジメントシステム』を利用して保健指導対象者を効率よく特定し、保健指導することで重症化予防を行い医療費の削減に繋げるといった流れを作りたかった」と語る。
「HiPROS」は保険料計算・レセプト審査・医療費計算などの大量のデータを高速で処理することができる。このため、組合のスケジュールに基づく運用が可能である。
「システムに運用を合わせるのではなく、パッケージが組合の運用に合わせられることが重要なポイントになった。また、昨今の災害やセキュリティ対策の観点から、組合とは別拠点のデータセンターでデータを管理するシステム形態も可能で、クラウド化できる点も評価して導入に至った」と植田常務理事は語った。
導入のポイント
同健康保険組合・谷口事務長は、「平成10年から従来の導入型システムの保守サポートを、東芝情報システムより受けており、その対応力を高く評価した。安心して、新基幹業務システム『HiPROS』にリプレースすることで効率化を図ることができた」と語る。
「HiPROS」は、各システム間のシームレスなデータ連携が可能となっている。保険料徴収システムから経理システム、現金給付システムから経理システム、経理システムから予算決算システムなど、容易にデータ連携することができる。このデータ連携により「効率化できた上に各担当者間の人為的ミスが無くなった」と谷口事務長は語る。
導入の効果
「HiPROS」は、レセプト資格審査を高速に処理できるだけでなく、資格喪失後診療の再審査データ (支払基金に返戻するレセプト) を自動で作成できる。これにより、同健康保険組合では、点検業務にかかる時間を半分程度に削減できた。
加えて、「HiPROS」は、支払基金からのレセプトの請求内訳データに関しても取り込むことが可能で、経理システムの決議書や支払データ、また、月報システムの第3号用紙にデータ連携される。
医療機関からのレセプトの取り下げに関しても再審査システムへデータを取り込むことができ、返付処理の自動登録が可能となった。
「今まで手作業で登録を行っていた作業が自動化できるので、外部機関とのデータ連携に関しても強化されている」と谷口事務長は高く評価する。
また、「総合健康マネジメントシステム」は、特定健診結果から生活習慣病該当者と予備軍を特定するだけでなく、特定した被保険者のレセプトデータから受診状況も把握することができる。この未受診者の受診状況の把握が、重症化予防に向けた保健指導実施に貢献した。
今後の展開
同健康保険組合において、「総合健康マネジメントシステム」により分析を行ったところ、以下のような点が判明した。
分析結果 #1 - 呼吸器系疾患:
1人当たりの医療費で1番高い疾病は、呼吸器系疾患。主に喘息やアレルギー鼻炎など。
特にアレルギー性鼻炎に対し今後何らかの対策を講じることが必要と考えている。
分析結果 #2 - がん疾患:
1人当たりの医療費が2番目に高い疾病は新生物 (がん疾患など) 。
ただし、全国健康保険組合平均12,089円に対して、同健康保険組合は10,290円と低い状況。
がんの種類を分析したところ、乳がんが全体の25%を占めている。
乳がん受診者の平均年齢が50歳ということも判明し、平成30年度より第2期データヘルス計画の新規事業として被保険者に対して乳がん健診補助事業を実施する。特に30歳から49歳の被保険者全員受診を目標に取り組む。
またがん予防の観点から喫煙率について調査したところ、男性の喫煙率が全国健康保険組合平均36.7%に対して、同健康保険組合は44.3%と高い。禁煙対策についても今後検討する必要があると考えている。
「今後は、医療費分析を事業所ごとに行い、「健康経営」の取り組みへの情報提供として、事業所に対して課題を明確にすることにより効果的な保健事業を展開したい」と植田常務理事は語る。
「HiPROS」においては、従来の導入型システムには無かったシステムが、新たに追加されている。
「HiPROS」によって追加された新たなシステム:
事業所収納システム:
事業所から徴収した保険料の収納管理を行う。
求償システム:
第三者行為や喪失後受診などの債権を管理する。
新たなシステムについて「今後、業務に合わせて相談しながら導入を検討していきたい」と植田常務は期待を寄せた。
組合情報
組合名 | 大阪自動車販売店健康保険組合 |
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設立 | 1962年(昭和37年)1月1日 |
所在地 | 大阪府大阪市福島区鷺洲1丁目11番19号 大阪福島セントラルビル3階 |
加入事業所数 | 29事業所 |
被保険者数 | 9,145人 |
被扶養者数 | 10,304人 |
レセプト数 | 16,000件 / 月 |
組合概要 | 大阪自動車販売店健康保険組合では、健保のしくみから契約施設の案内に至るまで、また、各種申請の手続きなど健康保険組合に関するあらゆる情報を提供している。 被保険者や被扶養者への健康増進活動に貢献している。 |
URL |
* 本記事は、2017年12月に取材した内容をもとに構成しています。記事内における組織名、役職、数値データなどは取材時のものです。
東芝情報システムの健康保険業務への取り組み
東芝情報システムでは、公益財団法人日本生産性本部(JPC)様、一般財団法人関西情報センター(KIIS)様から委託を受け、健康保険組合様のシステム導入、開発、保守、サポート作業を行っています。
大阪自動車販売店健康保険組合様において、最新 OS 対応、高い効率化が実現されたシステムリプレースのご要望があり、公益財団法人日本生産性本部(JPC)様で開発された「HiPROS (ヒプロス)」と、一般財団法人関西情報センター(KIIS)様で開発された「総合健康マネジメントシステム」の導入を行った。
「HiPROS」概要
「HiPROS(Health Insurance Progressive and Sustainable System)」とは、JPC 様で開発された健康保険組合業務の統合型基幹システムです。
「業務機能の充実」「利便性・操作性の向上」「セキュリティの充実」の3つの側面から各組合様のご要望・ご意見を集約し、反映させたトータルシステムとなっています。
「HiPROS」はパッケージシステムでありながら、カスタマイズにも柔軟に対応しています。
「適用系システム」「給付系システム」「総務系システム」「保健事業系システム」「報告系システム」と、健康保険組合業務を幅広くサポートします。さらに、ホスティングサービスなどのシステム周辺ソリューションで運用面でもサポートします。
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適用システム
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徴収システム
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任継収納システム
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事業所収納システム
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レセプトシステム
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現金給付システム
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求償システム
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経理システム
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予算・決算作成システム
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組合原簿システム
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固定資産管理システム
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健診・指導管理システム
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事務管理システム(補助金・施設など)
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月報システム
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調査報告システム(厚労省・健保連・支払基金などへの報告資料出力)
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メニュー設定
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操作ログ取得
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セキュリティレベル設定
- ホスティングサービス
- 電子帳票
- セキュリティ
IC カード/PC 操作ログ管理/サイバー私書箱/簡易暗号化ツール/ウィルス対策ソフト更新 - 管理・メンテナンス
サーバーログチェック/機器監視/ユーザー権限管理/データ消去/周辺機器設定/ソフトウェアインストール/データ復旧 - バックアップ・リカバリ
遠隔地バックアップ/PC 初期状態復旧/PC 付属品保管 - その他
特殊会場設営/事務所移転
「総合健康マネジメントシステム」概要
「総合健康マネジメントシステム」とは、KIIS 様で開発された被保険者の医療費構造の把握や、被保険者の健康増進を図る保健事業計画の策定・検証を支援するシステムです。
電子レセプト(被保険者が受けた医療の内容・金額の情報)と健康診断情報を統合的に一元管理し、分析できるシステムとなっています。
基本機能 + モデル分析(オプション)
断面的な分析
単年度のデータを用いて実態把握を行うことを目的として、各要素を組み合わせた分析を行います。
時系列推移・比較分析
複数年度のデータを用いて、経年変化や推移比較により傾向の把握を目的とした分析を行います。
効果分析・評価
保健指導や健康増進活動の情報と各種結果情報を照らし合わせて、効果・改善の状況を把握する分析を行います。
モデル分析(オプション)
- 重症化予防経年分析モデル
- 糖尿病性腎症患者の重症化予防
- 非肥満の健診リスク保有者に対する発症予防
- 傷病別医療費と健診レベル分布による保健指導アプローチ
台帳条件検索
- 台帳検索
- 複合条件検索
- 個人グループ台帳
「データヘルス計画支援」プラン
- 受診勧奨プラン
- 重症化予防プラン
- 受療行動矯正プラン
- 条件パターン設定
全メニュー共通
- 対象者一覧
- 個人結果表
- 各種情報台帳
- 個人プロフィール
ドリルダウンを使ったシナリオ分析(EMITAS-I)
現状・効果分析
- ダッシュボード
- 保健指導
- 医療費分析(主傷病)
- 医療費分析(代表傷病)
- 医療費分析(分配結果)
- 健診指導評価
- 重複/頻回受診シナリオ
指導・フォロー
- 条件抽出機能
- リスクフローチャート
PDCA 効率化
- 保健事業登録
- 保健事業モニタリング
- 対象者データ取り込み
- 実施者データ取り込み
レポート機能
- 個人向け通知